ラーメン種類・タイプ

背脂チャッチャ

背脂チャッチャ系とはスープを力強くするため、ラーメン丼の上に豚の背脂をチャッチャッと振りかけたラーメンのこと


出典:Travel Note

背脂チャッチャ系は、スープに豚の脂のインパクトを強めるため、煮込まれて粒サイズ状になった豚の背脂を網に乗せてチャッチャッと振ってラーメン丼に振りかけたものです。白い背脂がラーメン丼上に降り注がれると、丼上に雪が乗ったようなビジュアルになりますね。
ラーメンでは、あげ網で麺を湯切りする際もチャッチャという音が出ますが、背脂を丼に振りかける際はそこまで大きな音は出ません。むしろ、丼上に背脂が拡散していく見た目をチャッチャと表現したように思います。
それでも、言葉にとって語感は非常に重要で、おもちゃのチャチャチャ同様、背脂チャッチャという響きはリズミカルだったので、ここまで人口に膾炙するようになったのでしょうね。

背脂チャッチャ系の歴史

背脂チャッチャ系のラーメン店は、今ではマスコミで見かける頻度こそ下がりましたが、人気そのものは根強いものがあります。実際、背脂チャッチャの有名店には現在でも長い行列ができていることが多いものです。
ラーメンでは脂の旨味がいかに重要なのか、実感できますね。

そんな背脂チャッチャ系の歴史を詳しく調べてみるとルーツは吉祥寺ホープ軒になるようですね。ホープ軒といえば千駄ヶ谷の店の方が知名度は高い気もしますが、ルーツとしては吉祥寺ホープ軒ということになります。

その吉祥寺ホープ軒本舗は、創業者の難波二三夫さんが戦前の1934年に貧乏軒という屋台をを出したのがルーツになるそうです。その後、難波さんは、戦後の昭和23年に阿佐ヶ谷で成華公司という店を開業。中国人が営業しているかのような本格派っぽい名前の演出が茶目っ気のある難波さんらしいセンスですね。
さらに、難波さんは、今のホープ軒につながるホームラン軒を開業し、さらにホープ軒本舗を開業。
このホープ軒本舗も最初は屋台でしたが、商売上手な難波さんは、ホープ軒という屋号の屋台を貸し出すビジネスを展開します。その当時、ホープ軒という名前の屋台は100台以上もあったそうです。
屋台での営業を終えた後、いよいよ今の吉祥寺でホープ軒の店舗で営業することになるわけです。

さて、100台以上あったホープ軒の屋台の店主の1人に、後に千駄ヶ谷ホープ軒を開店する牛久保英昭さんがいました。この屋台は今のようなチェーンではなく、屋台の店主が自分の好きなようにラーメンを作っていたようです。あくまで屋台を借りてるだけの対等な関係で弟子と⇔店子ではなく、お互いに助け合う関係だったそうです。牛久保さんは、最初は内幸町で開業した後、昭和50年に千駄ヶ谷で店舗として開店して今に至ります。
恵比寿にあったらーめん香月、浅草・堀切菖蒲園の弁慶、常盤台の環七沿いにあった土佐っ子などの創業者は、牛久保の屋台時代の弟子。千石自慢は千駄ヶ谷ホープ軒になってからの弟子だそうです。

なお、白い背脂がラーメン丼上にチャッチャと降り注がれるようにしたのは千駄ヶ谷ホープ軒が最初。やはり背脂チャッチャ系のビジュアルの元祖は千駄ヶ谷の牛久保さんなんですね。

背脂チャッチャ系 元祖

背脂チャッチャ系ラーメンの元祖と呼ばれる店は、以下の3店があげられると思います。

まずは、背脂チャッチャを始めた千駄ヶ谷のホープ軒です。開店以来、千駄ヶ谷で営業していて、歴史も古い店です。創業30年という老舗ラーメン店で最初は屋台から始まりました。味も安定していて美味しい1軒です。

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出典:メシ通

2店目は環七土佐っ子ラーメン。一度、閉店してしまいましたが、今は池袋で復活しています。背脂の量の多さから一世を風靡しましたね。


出典:環七土佐っ子ラーメン (トリップアドバイザー)

3店目は恵比寿にあったらーめん香月(今は五反田で営業中)でしょうか?
ここは、バブル時代には大行列ができた店ですが、、2013年には支店も含めて全店が閉店。今は六本木で「らーめん香月が復活して営業しています。比較的、薄味で、恵比寿や六本木の雰囲気には合っていると思います。

出典:ネタとぴ

がんこ系

がんこ系とは創始者の一条安雪氏が開発した牛骨スープのラーメン。看板がなく牛骨がぶら下がっていることでも有名。


出典:食べログ 一条流がんこラーメン総本家

がんこ系ラーメンとは?

がんこラーメンとは、一条流がんこラーメン総本家と創始者の一条安雪の直弟子のみ名乗ることを許されているラーメン店の系統です。
家系ラーメンのように大量の店があるわけではありません。あくまでもマニアックなラーメンなのですが、固定ファンが多いところがポイントだと思います。

がんこ系ラーメンの特徴をまとめると、以下のようになります。

◆スープ
・韓国料理の牛テールスープをヒントに作られた牛骨スープに、魚介系のダシをブレンドした塩分濃度が非常に高いダブルスープ。
・スープに投入する背脂の量を変えることで、あっさり・こってりの味が選べるようになっている。
・スープの温度はかなり熱い。

◆麺
・強く縮れている中細麺。現在のラーメン界で主流の細いストレート麺とは一線を画すタイプ。
・麺の茹で加減はかなり固め。

◆具
・大ぶりサイズのバラ肉ロールチャーシュー2枚、海苔、メンマ、刻みネギ、焦がしネギ(焦がしネギは渋谷にある喜楽の揚げ葱にインパイアされたものらしい)。

◆基本メニュー
・塩ラーメン、醤油ラーメン。

◆特別メニュー(悪魔の日・スペシャル)
・悪魔
家元がいる総本家だけで提供される特別なラーメン。かなり癖が強く、逆に固定マニアも多いもの。非常に塩辛いスープが特徴です。具材は毎回、ちょっとずつ変わります。
通常は毎月1回だけ「悪魔の日」と呼ばれる日に提供されます。

悪魔というメニューは、家元が幼い頃、父親が満州で覚えてきて家族に振る舞っていたラーメンがベース。家元の思い出の味を改良したラーメンということになります。

ただし、塩分が強過ぎるため、かなり身体に良くないということは家元自身も自覚している模様。もともとは週1回のメニューだったところ、月1回まで減らしたのは、常連客と家元自身の健康に配慮したからだと言われています。

・がんこスペシャル
こちらも月1回のペースで開催される「がんこスペシャルの日」というイベントだけで食べられる限定ラーメン。本来ならラーメンに使用しない食材・素材が使用されるのが最大のポイント。どんなラーメンなのかは、当日注文するまで秘密になっています(ただし、一応、事前に大体の告知はされています)。
普通はラーメンでは使わない素材を使うため、一期一会の実験的メニューしか提供されません。素材も高級で珍しいものを使う分、ラーメンの価格も高いため、悪魔以上に一般人には向いていないとされていますが、スペシャルだけを食べにくるマニアも数多くいます。

◆外観
・看板がなく、店の前に牛骨をぶら下げる。
 家元が担う本家は頭部牛骨、暖簾分け店は脚骨(拳骨)をぶら下げています。

・・・このように、マニアックな感じが漂いまくっているのが、がんこ系ラーメンの特長になります。

がんこ系ラーメンが食べられる店

総本家@四谷三丁目 家元が店長の総本山。

あすなろ@尾山台 創業の地、高戸橋で修行後、独立。

クレープBON@福井 土曜のみラーメンが食べられる。

元祖一条流がんこ十一代目
行徳 がんこにしては優しい味。

宗家一条流 がんこラーメン十八代目@なんば ねぎ油かえび油かを選べる。

きくちひろき@熊谷 直系の分家

宗家一条流がんこラーメン八代目直系 町屋店 がんこ八代目直系の市川知明さんの店

盛壱@習志野 がんこ直系二代目

元祖一条流がんこ 西早稲田 正統ながんこラーメンの味

覆麺 智 @神保町 覆面をした二人組が運営

がんこ家元

家元とは、がんこラーメン創業者の一条安雪さんのこと。弟子が独立した際は、〇代目がんこラーメンと名乗ることを許している制度を作ったので家元と呼ばれています。
家元と呼ばれるだけあって本人のスタイルも宗教家のような雰囲気です。
◆スキンヘッドで白髪のひげを伸ばしていたこともあった。
◆服は白のランニングシャツと作業ズボン。首にはタオルをかけている。
◆気さくでよく客と会話する。調理中も豊富な話題で客を引き付ける。

まあ、実際に、がんこラーメンに行って家元と話せば、家元と呼ばれている雰囲気が伝わってくると思います。
ちなみに、家元が厨房に立つ店が、がんこ総本家と呼ばれています。

がんこラーメンの歴史

がんこ系ラーメンは高田馬場は大正製薬前の高戸橋で開店しました。最初はラーメン専門店ではありませんでした。昼は丼、夜はラーメンを売るという二毛作の営業形態だったのです。

開店当時は書き入れ時の昼に丼を出していたぐらいですから丼の方が人気メニューで、ラーメンはイマイチだったようです。
実は、この創業期の夜だけ出していて不人気だったラーメンが、今の悪魔の原型なんですね。
家元が「一般人には悪魔をオススメしない」というのも、かつて失敗したことがあるメニューだからだと思います。悪魔という名前も万人向けではないことを、あえて主張しているような気がします。

このように悪魔の原型ラーメンはヒットはしませんでしたが、ラーメンへの執念そのものが非常に強かった家元は、新しいタイプのラーメンを創作。今のがんこラーメンです。1983年(昭和58年)1/5に、今のがんこラーメンを出す専門店に切り替えるとラーメンが1日に150杯も出る大人気店となりました。

ところが、家元は忙しく仕事をするのが大嫌いなタイプだったので、大人気店なのに、ある日、突然、このラーメン店を閉店してしまいます。

これに驚いて悲しんだのが高田馬場の地元にある早稲田大学の大学生を中心とする数多くの固定ファン。彼らは店の再開を希望する署名を集めて家元に提出する行動に出ます。既に1日に150杯も出る名店だったので、数多くの署名が集まったようですね。

家元の一条安雪も、固定ファンからの数多くのリクエストを意気に感じたのか、店の再開を決心します。
ただし、以前のような忙しさから逃れるため、客数を制限できるよう、会員制の店舗にしたところが家元らしいコダワリでした。

会員制と言っても名ばかりのものではなく超本格的です。常連客の紹介がない限り店には入れない仕組みにしました。現在でも老舗割烹や高級寿司店ぐらいしかやっていない敷居の高い会員制です。
店を紹介する際も、家元は「親族や親しい友人以外には紹介しないで欲しい」と念を押したと言われています。

店舗そのものも、会員制を徹底するため一元客が来ないように工夫しました。看板はつけず、外壁は黒一色で塗りつぶし、窓には黒のカーボン紙を張って目隠しして、何の店なのか、全くわからないようにする設計にしました。こんなラーメン店では今でも、がんこラーメンしかありません。

ただし、この外観だと常連の会員ですら、営業中なのか、閉店後なのか、わからない状態になるため、店の外に暖簾を下げる代わりに、牛骨をぶら下げました。店前に、牛骨が下がっている時は営業中、牛骨が下がっていない時は閉店後だとわかるようにしています。

このように、会員制を徹底して再開したのにもかかわらず、会員数は再開3年後には20000人を超えるまでになり、結局は再開前よりも大行列ができる店に戻ってしまいました。

忙しく働くのが嫌いな家元は、またしても閉店したかったんだと思います。でも、さすがに2万人もの固定ファンが付いた状態では2回目の閉店はできず、一番弟子に店を譲って、店舗そのものは継続して営業させることにしました。

この時点で、一度はラーメン業界から引退した家元でしたが、1992年には青砥にがんこラーメンを出して、この青砥店も大繁盛店にしています。

その後も、風来坊的な感性が強い家元は、内藤町、早稲田、池袋等で店を開いては繁盛させ、繁盛させると弟子に譲るという、独特の行動を繰り返しています。

2019年4月現在は、家元は四谷三丁目に総本家がんこラーメンを開いています。ここでは上品と下品というメニューを提供しています。看板メニューは下品。下品にも純正と不純があって、不純はスペシャルの日に使うスープを元に仕込んだものなので、特に人気があります。

しかし、何度も何度も店を作っては潰してきた家元なので、四谷三丁目の店もいつまで家元が店長を続けるのか、誰にも分からない状態ではあります。

焦がしネギ(揚げ葱)

焦がしねぎとは油で揚げたねぎのこと。揚げネギともいう。ラーメンのスープの香ばしさと食感が増す。

焦がしネギ(揚げねぎ)は葱を大量の油(サラダ油など)で揚げたもの。調味料でもありトッピングでもある食材です。
焦がし葱は、葱1本をそのまま揚げてから切るのではなく、葱の欠片1つ1つがカラっと揚がるように細かく切ってから揚げます。切り方は、微塵(みじん)切りか、白髪切りか、大体、このどちらかになります。一般的には、みじん切りにしてから揚げることが多いです。


出典:古樹軒

焦がしねぎを入れたラーメン

こがし葱は、台湾から日本に来られた方が始めた店で出されるラーメンで定番になっています。
有名なのは、東京は大井町の永楽渋谷の喜楽ですね。

永楽

出典:GOTRIP

焦がしネギとネギ油がたっぷりと入った中華そばがウリ。スープは上品な薄味で、麺は柔らかな食感の平打ち麺。もやしの量も多めですが、やはりポイントは焦がし葱。スープの上に大量に乗ります。チャーシューは肩ロースを使ったオーソドックスなタイプ。この店の初代店主は台湾から来た方だそうで、中華料理の影響を感じます。
また、揚げ葱が黒く、ラーメンの表面にゴミが浮かんでいるように見えるため、常連はゴミラーメンと呼ぶという都市伝説がありますが、実際に「ゴミラーメン1つ」のように注文している客は見たことがありません。面白おかしく伝えられているだけのようです。

喜楽

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出典:Mealthy [メルシー]

1952年創業の渋谷の老舗。中華麺ともやし麺が人気。老舗ながら最新のラーメン店と互角の高評価を維持している名店です。中華麺は、スープは鶏ガラ、豚ガラから取ったさっぱりタイプで、台湾直輸入の焦がしネギが浮かんでいます。麺は平打ちの太麺。具は茹でモヤシ、チャーシュー、味付け玉子半分。喜楽最大の魅力は、やはり焦し葱の香ばしさが効いた美味しいスープだと思います。

焦がしねぎを入手する方法

まず、通常のスーパーでは売っていないので、中華食材の専門店、または、中華やエスニック食材の通販で手に入れることが一般的です。ただし、市販の焦がしネギは、赤ネギやエシャロットを揚げたものが多く、長ネギを揚げて作ったものと比べると、キリっとした風味が弱い傾向があると思います。ちなみに赤ねぎは玉ねぎとエシャロットを足して2で割ったような風味を持つ食材で、揚げると独特の甘みが生まれる食材です。

焦がし葱の作り方・レシピ

焦がし葱油の作り方を紹介します。簡単に作れるレシピです。

■材料
サラダ油 200ml
長ねぎ 1本

■作り方
【1】長ねぎの根元は切り落としてから、3mm幅を目安に輪切りにします。
【2】フライパンに、サラダ油を入れて、輪切りにしたネギ、薄く切ったニンニクを入れて弱火にして焦がさないように約30分ぐらい揚げます。とにかく限りなく弱火で揚げることが重要です。長ねぎを焦がしてしまうと、揚げねぎとして使えませんし、ネギ油も苦くなってしまいます。
【3】長ねぎがキツネ色になるぐらいコンガリとした焼き色がついたら火を止めます。
【4】網で濾して長ねぎと油を分離させます。揚げたネギが揚げねぎに、油はネギ油になります。

家系ラーメン

家系ラーメンとは横浜発祥で豚骨醤油スープにうどん並の太麺を合わせたラーメンのこと。

家系の開祖の吉村家は1974年に創業。そこから全国に広がっていったのが家系ラーメンです。吉村家から暖簾分けされた店名(屋号)には、〇〇家のように、店名の最後にを付けることが多かったので家系という呼称が生まれました。
一般的には家系という熟語は、家系図のように「かけい」と呼ばれますが、ラーメン界では「いえけい」と呼ばれています。

家系ラーメンの特徴

スープ
豚骨・鶏ガラで取った濃厚スープに醤油ダレを合わせたスープ。スープの表面には大量の鶏油が浮かんでいるのも家系ならではの特徴です。
このスープについて、家系創始者の吉村さんは「九州ラーメンの豚骨スープと東京の鶏ガラ醤油スープを混ぜたら美味しいスープになると思った」というエピソードが知られていますが、実際には吉村さんの修行店であるラーメンフランチャイズチェーンのラーメンショップ(略称:ラーショ)の豚骨醤油スープの影響を受けたと見る方が自然だと思います。
ただし、スープの濃厚さ、大量の鶏油などは吉村さんの独創的な部分で、だからこそラーショを凌ぐ発展ができたのだと思います。


太いストレート麺。うどんのようにモチモチとした独特の食感がある歯ごたえのいい麺です。他のラーメンの麺より太い分、啜りやすさを考えていると思われ、麺の長さは少し短めになっています。
この麺は自家製麺ではなく製麺所に発注するケースがほとんどなのも家系ならではの特徴です。その中でも最も有名な製麺所は、総本家の吉村家にも納品している酒井製麺です。もともと酒井製麺はうどんを得意としていた製麺所なので、独特の食感を持つ太ストレート麺が製造できたようです。


ホウレンソウ、チャーシュー、巨大な海苔が定番。これらのパーツで家系ラーメンは構成されています。

店数
日本とアジアで約1000店もあるそうです。家系発祥の横浜には約150店舗があると言われています。今では家系は全国区になりつつありますが、横浜のソウルフードという一面も残っている感じもしますね。

サービス
家系ラーメン店、特に吉村家の暖簾分けの店では、タレの量・スープに浮かべる鶏油の量・麺の茹で方がリクエストできるケースが多いです。サービス精神が旺盛なのも家系ラーメンの特徴です。

家系ラーメンの有名店

家系総本山 吉村家
家系ラーメン創始者の吉村実さんの店。文字通りの家系総本山。もともとは新杉田駅の磯子産業道路沿いにあり、1日1500杯を出す超繁盛店として有名でしたが、1999年に横横浜駅西口の徒歩圏内に移転して、圧倒駅に交通の便がよくなりました。

家系元祖の吉村家のラーメン
出典:TRAVEL STAR

麺は酒井製麺の太麺。スープは、豚骨1トン、鶏ガラ500羽分を使っていて白濁しかけたもの。表面は大量の鶏脂で覆われています。具は、分厚く大きくスライスしたチャーシュー、巨大な海苔が3枚、茹でたホウレンソウです。
麺の固さ、スープの脂の量、味の濃さを客が自由に指定できるのは総本山の吉村家から始まったものです。

寿々喜家
スープがマイルドな仕上がりの家系ラーメン。この情報を書いた時点では、全国の家系ラーメンの中で食べログの評価は1位の店です。

出典:ライラのラーメン情報ブログ

軽やかな豚骨風味ながらコクと旨味をしっかりと感じさせるスープにやや強めの醤油ダレを合わせて塩梅が絶妙。鶏油もコクをプラスしていてバランスも良さが光ります。優しい味の家系ラーメン店として地元の人たちだけでなく遠くからも来店者が殺到。店員のテキパキとした気遣いも評判のいいラーメン店です。

家系ラーメンの亜流

最近、家系は吉村家とは縁もゆかりもないチェーン店が増殖しています。本来の家系とは無関係の大資本のチェーン家系が増え続けているのです。その背景にはラーメン食材の保存技術の進化があります。特にスープの冷蔵が容易になり、同時にタレ、麺などもパッケージ化して提供するシステムが進化したため、骨からスープを炊く職人技を持っていなくても、簡単に家系ラーメンの味をチェーンで提供できるようになりました。しかし、味に大差がなくなるスープ保存技術が進化しても、吉村家、寿々喜家には敵わないでしょう。あまりに亜流が進化して、本物の家系ラーメンが衰退してしまったら残念なことですね。

セメント系ラーメン

セメント系ラーメンとは煮干しを粉砕したスープと鶏白湯のスープをブレンドした超濃厚な煮干しラーメンのこと。

セメント系ラーメンとは?

セメント系ラーメンの意味は、煮干しを大量に砕いて作ったスープと鶏白湯スープを混ぜ合わせて作ったラーメンということです。もちろん、あくまでも俗称であって、実際のメニューには濃厚煮干しなどと記されていることが多いです。当然ですが、実際のメニューにはセメント系と書かれることはありません。あくまでも俗称としてセメント系と呼ばれているわけです。

実際、セメント系ラーメンのビジュアルはセメント(コンクリートになる前の状態)に近い感じがしますね。濃い灰色でセメントを砂利や水と混ぜた状態の色合いが、セメント系ラーメンの見た目にそっくりです。

本物のセメントの色合いはセメント系ラーメンに近いイメージ。

出典:もしもセメントを浴びてしまったら「絶対水を浴びてはいけない」

さらに、セメント系ラーメンを食べる際は、砕いた煮干しがジャリジャリする感じになるので食感も似ています。
実際にセメントを食べたことがある人はいないので、あくまで想像なのですが・・・。

セメント系ラーメンの作り方

セメント系煮干しラーメンの製法は、従来の煮干しラーメンの作り方とは全く違います。完全に別物です。
従来の煮干しラーメンは、煮干しで出汁を取る作り方、つまり低温のお湯で煮干しの旨味を抽出する方法でスープを取っていました。ただし、このやり方だとどんなに濃厚に出汁を取ったとしても、出汁(水溶液)には煮干しの旨み成分を受け入れる限界値があるので煮干し味の濃さにも限界が生じてしまいます。

それに対して、セメント系の極濃煮干しラーメンは、煮干しを丸ごと細かく粉砕したパウダー(粉)を直接、鶏白湯のスープに混ぜて作りますので、煮干し味の濃さは出汁(水溶液)よりも上限値が高くなるのです。ひたすら煮干し味、いわゆるニボニボした味わいを濃く強く作れます。

さて、セメント系ラーメンの煮干し味とザラザラ感は煮干パウダー(粉)が担いますが、セメントのようなドロドロした粘度は鶏白湯のスープが担ってます。セメント系の鶏白湯スープはとにかく濃厚なので、ザラザラした煮干し粉を包み込んでジャヤリジャリした粉の口当たりを抑える効果があります。さらに、鶏白湯のまろやかな動物系の風味もラーメンのスープとして美味しく飲める役割を担っています。

セメント系のセメントスープはニボニボ感が強い

セメント系の極濃煮干しスープは、出汁を取った煮干しスープと違って、煮干しをそのまま粉砕しているので煮干しの風味・苦味が直接、口中に入ってきます。
さらに、味覚だけでなく食感も強力で、煮干しパウダーのザラザラ感まで口中に入ってきます。
このように「煮干しそのままの苦味」+「煮干しパウダーのザラザラ感」がセメント系ラーメンの特徴だと言えます。ニボニボ感が強い、ニボニボ苦味のラーメンとも形容されることもありますが、言いえて妙の上手な表現だと思いますね。

セメント系ラーメンを出す店(東京・神奈川)

中華ソバ伊吹
中華ソバ伊吹出典:食楽web

セメント系ラーメンのパイオニアで、今なおセメント系を牽引し続けているのが板橋区の志村坂上にある中華ソバ伊吹。濃厚煮干セメント系ラーメンの王者だと思います。伊吹の煮干スープの濃厚さは尋常ではないレベル。原価率を考えているのか、考えていないのか、とにかく大量の煮干し粉をスープに投入しています。伊吹の煮干しスープは強力にドロドロで黄みがかった灰色。まさにセメントが想起されるたたずまい。食べた後は煮干しの濃さが強く印象に残ります。

いのうえ
いのうえ出典:ただ麺が食べたいだけなんだ

セメント系ながら煮干しパウダーのザラザラ感をほとんど感じさせない丁寧な作り。洗練されたセメント系ラーメンなのが川崎市の尻手のいのうえです。ここはパウダー状の煮干しを目の細かい網で3度も漉しているので、ほとんど煮干し粉のザラザラ感が感じられません。セメント系の粉っぽさ・ザラザラ感は豪快な味わいとも言えますが、正直、不快に感じることがないわけではありません。その点、いのうえは丁寧に煮干し粉を漉して作っているので、口の中で不快に感じるレベルの煮干し粉はほとんど除去されています。

亀戸煮干中華蕎麦 つきひ
亀戸煮干中華蕎麦 つきひ
出典:ラーメンデータベース

気鋭のセメント系ラーメン。亀戸にあります。スープは煮干しの風味が香ばしい超濃厚タイプ。濃厚に仕上げた鶏白湯が煮干粉の強い風味と塩味をまとめています。エグミ・苦み・塩味のバランスがよく、癖がないスープなのでセメント系ラーメンとしては飲みやすい仕上がりになっています。鶏白湯の粘度、煮干し粉の量もセメント系の中ではかなり多いタイプだと思います。

中華そば いづる
出典:ラーメン食べて詠います

芝大門にある中華そば いづるは、いくつかあるメニューのうち、濃厚煮干しそばがセメント系です。鶏白湯と煮干し粉を組み合わせるセメント系の定番製法ですが、煮干しはイワシ煮干しだけでなく、イカ煮干しも大量に使っているのが特徴。イワシ+イカなので味わいに奥行があります。その上で、イワシ煮干しの濃さだけでも伊吹に匹敵するか、それ以上の超濃厚さがウリ。セメント色スープは灰色ではなく青魚のような深緑色に近く、いかに濃厚なのかわかります。

・・・ここで紹介した以外にも、セメント系ラーメンを出す店は全国レベルでどんどん増えています。メインとなる材料は煮干しと鶏ガラで、手に入りにくい特別な素材を使うわけではないので参入障壁は低いと思います。新ジャンルのラーメンとして、これからますます勢力を拡大していくことが予想されますね。

セメントスープの起源

セメント系ラーメンのセメントスープは、2011年頃からラーメン界で話題になり始めました。やや黄味がかった灰色スープが特徴のセメント系の濃厚煮干しラーメンですが、見た目も、食感も、どことなくセメントっぽいので、セメントスープとかセメント系ラーメンと呼ばれています。さらに、あまりにも濃厚なので極濃または濃密の煮干し系ラーメンと言われることもあります。

セメント系ラーメンの名称はいろいろありますが、やはり、極濃なセメントスープが最大の特徴になりますね。