ラーメン調理

麺線を整えるとは?

麺線を整えるとは、ラーメン、つけ麺で、麺を美しく揃えて盛り付けること

もともと麺線とは麺帯から細長く切り分けられた麺のこと

そもそも「麺線とは何か?」ということですが、麺線とは、麺帯から細長く切り分けられた1本1本の麺という意味になります。
現在、一部の手打ちラーメン等を除けば、通常のラーメンの麺は、ほぼロール式の製麺機で製造されています。これはローラーによって薄く圧延された(延ばされた)麺帯を切り刃ロールで切り出す製麺方法になります。
この時、麺から切り分けられた麺のことを麺と呼びます。状のものが状に切り分けられたものなので麺と呼んでいるわけです。

●参考:麺帯とは?

麺線を整えるとは?

麺線とは、ラーメンの1本1本の麺のことですから、麺線を整えるとは、1本1本の麺を揃えて、丼に美しく盛り付けることを意味しています。

このJUNK STORYの写真のように、かなり美しく麺線が並べられていると「麺線が整っている状態」が実感できるのではないかと思います。


出典:JUNK STORY と 麺と心

麺線を美しく整える方法

麺線を美しく整えるためには、いろいろなテクニックがあります。
最も基本的なのは菜箸で整えていくやり方です。


出典:ぐるなびラーメン竹馬

この写真では、麺を菜箸で大量につかんでいます。この後、麺を高く高く丼上に持ち上げます。そうすると[全ての麺がバンザイしている状態]というか[麺が真っすぐに丼上に伸ばされた状態]になりますので、その真っすぐの状態を保ちながら、丼に寝かせていくように並べれば麺線が整った状態になります。

なお、一般人が確実に麺線を美しく整えるなら、茹で上げた麺をスープが注がれた丼に入れた後、右手で菜箸を持って、左手で持った木の櫛で、麺を漉くように揃えていく方法がいいと思います。箸でやるのに比べれば、より確実に麺線が美しく整うと思います。

実際にこの方法で麺線を整えている店も実際にあるようですが、動作の見た目がプロっぽくなくなるし、櫛で漉くと結構なオペレーション時間が追加されそうなので、プロのラーメン店では滅多に見られないでしょうね。

ダブルスープ(Wスープ)

ダブルスープ(Wスープ)は豚骨・鶏ガラなど肉系素材スープとカツオ節など魚介系素材スープをラーメン丼に注ぐタイミングで合わせる製法のこと

Wスープを広めた青葉@中野

出典:中華そば青葉の公式HP

ダブルスープ(Wスープ)の作り方

ラーメンのキーワードでダブルスープという用語を耳にしたことがある方は多いと思います。でも、「ラーメンのダブルスープはどうやって作るもの?」って質問された場合、ちゃんと回答できますか?
一般的には「動物系ダシと魚介系ダシの両方で取ったスープのことでしょ?」って答える方が多いように思います。つまり、全ての豚骨魚介、鶏ガラ魚介のラーメンは、全てダブルスープということになる?

実は違うんです

ダブルスープ(Wスープ)のW(ダブル)とは、単純に「素材の系統が2つある」ということではなく、「素材の系統が異なる2つのスープを最後にブレンドする製法」ということなのです。

具体的には、動物系(例:豚骨・鶏ガラ)のスープと、魚介系スープ(例:煮干し・鰹節)を別々の寸胴で取って、最後に1つのスープとして混ぜ合わせる製法を示す用語なのです。ですから、単純に2つ以上の素材を一緒に煮込んで取ったスープは、ダブルスープ(Wスープ)とは呼びません。

例えば、豚骨・鶏ガラのスープを煮込んでいる鍋の中に、出汁袋などに入れた鰹節・煮干しを追加して仕上げるスープはダブルスープとは呼べません。あくまでもダブルスープ(Wスープ)は、2つの寸胴・鍋で取った別々のスープをお客さんに提供する直前のタイミングで1つに合わせるラーメンの作り方(製法)のみが正式な意味になります。

Wスープ発祥

Wスープというキーワードを世に広めたのは、やはりダブルスープの元祖と言われる中野の青葉です。今では老舗ですが、開店当時はWスープを世間に知らしめた新進の名店として、一世を風靡しました。

なぜ、1つの店に由来するダブルスープ(Wスープ)製法が日本中に拡大したのか?
やはり、ダブルスープ製法で作ったラーメンは美味しいから・・・というのがシンプルな回答になります。

それまでのラーメンでは、スープは1つの寸胴で、豚骨・鶏ガラ・魚介ダシを煮込んでいるのが通例でした。
しかし、このやり方の場合、同じ温度・同じ煮込み時間だと、魚介ダシがいち早く劣化してしまいます。魚介ダシは煮込み過ぎると、苦くなって風味が落ちます。
ですから、1つの寸胴でスープを作る場合でも、魚介ダシは最後に寸胴に入れて短時間でダシを取る製法にしている店が多いのですが、それでも営業時間中に魚介ダシは徐々に劣化していってしまいます。

そこで、素材によって最適に煮込む時間、煮出す温度を分けるため、【豚骨・鶏ガラなどの肉系の寸胴】、【煮干し・鰹節などの魚介系の寸胴】を別々に分けて仕込む合理的なダブルスープ(Wスープ)製法が考案されたわけです。2つの寸胴でスープを取って最後に丼の中で1つに合わせるダブルスープ(Wスープ)ならば魚介系ダシの劣化がほとんどない美味しいスープになります。煮干し・鰹節などの魚介系の寸胴だけは低温にしておき、魚介ダシの劣化を防げるからです。

21世紀のラーメンでは、さらに進化してきていて、豚骨・鶏ガラなどの肉系の高温寸胴のスープと煮干し・鰹節などの魚介系の低温寸胴のスープをブレンドして、さらに雪平鍋で加熱して、熱々の状態で出す店が多くなりましたね。

ダブルスープ(Wスープ)は作る手間はかかりますが、やはり美味しさは別格になるので、品質の良さが認められて全国に広まっていったわけです。

ダブルスープのレシピ

自宅でダブルスープを作るレシピを紹介します。

ダブルスープ レシピ
出典:Wスープの自作ラーメン

材料 (4人分)
鶏ガラ・モミジ・手羽先  2羽分
昆布 1枚
魚系だしパック 2袋
葱 1本
ニンニク 2片
豚肩ロース 500g

【1】魚介系ダシを水出しで仕込む
出典:Wスープの自作ラーメン

最初に、煮込まずにダシが取れる魚介系素材を仕込んでいきます。作業当日の前日夜から昆布を半分に切ったサイズのもの2枚、魚介系の市販のダシパック3つ、煮干5~7本ぐらいを鍋に入れ、常温水でダシを取っていきます。寝ている間に8~10時間ぐらい水につけておけば自然にダシが取れます。いわゆる水出しってヤツです。煮込まないので全く酸味が出ないスッキリしたダシが取れます。

【2】入手した鶏ガラを仕込む濃厚鶏ガラスープの材料
出典:Foodie(フーディー)

動物系素材は入手しやすい鶏系で作ります。鶏ガラ、手羽先はスーパーでも普通に買えます。ただし、モミジはスーパーでは滅多に手に入りません。豚系の素材も全般的にスーパーでは入手できません。
ちなみに業務用素材の品揃え豊富なハナマサや精肉店ならモミジも豚系素材も手に入ります。

【3】動物系ガラ(鶏ガラ)を煮込む鶏スープを煮る出典:鶏がらスープのとり方 _ レシピサイトぷちぐる

鶏の旨味を前面に引き出すため、野菜は香味野菜(葱・ニンニク・生姜など)だけにするのがベターだと思います。しっかりアクを取りながら強火で煮込みます。1時間ぐらい鶏系ガラを煮たらチャーシューにもなる豚肩ロースを投入。ただし、豚肩ロースは煮込み過ぎてパサパサにならないよう約1時間後にスープから引き上げます。

【4】やや白濁した鶏ガラスープができる
出典:Wスープの自作ラーメン

スープはを4-5時間ぐらい煮込むと白濁してきます。鶏ならではの香りが最も強く出るタイミングだと思います。これ以上、煮込むと鶏白湯になってしまうので一般的なWスープでは、これぐらい煮込んでから網で濾すのがベストです。この状態でスープをアミで濾せば、しっかりした鶏ガラスープが完成します。

【5】魚介スープを煮込む
出典:全部自分で作りたい

水出しで仕込んでおいたスープを沸騰させないように低温で10分ほど温めます。魚介スープの温度は非常に重要。沸騰させるとすぐに苦味が出て劣化してしまいます。途中で昆布を取り出してから鰹節を追加投入して引き上げます(追い鰹と言います)。追い鰹まで終えたら様々な風味がミックスされた魚介スープになります。

【6】魚介スープの完成IMG_8777.jpg
出典:俺のラーメン:「魚介系スープ」の作り方

魚介系のダシは細かいので、最後に細かい網で濾します。舌触りがスッキリした感じになるように仕上げるのがポイントです。これで魚介系スープが完成します。

【7】ダブルスープの完成
出典:Wスープの自作ラーメン

最後に、鶏ガラスープと魚介系をミックスして、Wスープが完成します。
最後の最後に、風味は最上になっている状態でブレンドするので、劣化のない美味しいWスープになるのです。

もちろん、Wスープだけではラーメンにはなりません。
スープの味付けを決めるタレ、チャーシュー、味付け卵、メンマ、海苔などの具を用意して、麺を茹でれば、ダブルスープを使ったラーメンが完成します。

トリプルスープ

ラーメンの進化は果てしなく、ダブルスープだけでなく、トリプルスープまでありますね。普通は、鶏スープ+魚介出汁+貝出汁でトリプルにすることが多いように思います。この3つのスープをそれぞれ別の鍋・寸胴で作ります。

鶏系を1つの寸胴でスープをとって、魚介と貝出汁を別に取ればダブルスープです。ダブルとかトリプルとか、工程に由来する表現はやめて「豚骨魚介」とか「鶏豚魚介」とか分かりやすい表現をした方がいいかもしれません。1つの鍋でスープを取っても、別の鍋で取って後で合わせても、それぞれの素材を劣化させずに作りきればいいと思いますね。

清湯スープ

清湯スープとは濁りのない透明なスープのこと。沸騰させない温度でガラ等の具材を煮込んで作る。

清湯スープとは?

ラーメンのスープには清湯、白湯という大きな区分があります。どちらも中華料理で使われている言葉が起源です。簡単に言うと清湯は澄んだスープ、白湯は白く濁ったスープのことを言います。
なお、清湯スープの読み方は「ちんたんスープ」、白湯スープの読み方は「ぱいたんスープ」になります。

清湯スープと白湯スープの違い

清湯スープはガラを沸騰させない温度でコトコト煮込むので、スープが乳化せず、透明なまま仕上がります。そのため、スッキリした味わいになります。西洋の料理で言えばコンソメのようなタイプです。

つくる楽しみ
出典:鶏清湯スープの作り方 – つくる楽しみ

白湯スープはガラを沸騰させて長時間、煮込むので、ガラの骨髄のコラーゲンが乳化して白くなります。そのため、トロみある濃厚で旨みが強いスープになります。西洋料理では白湯スープに近いタイプはあまり見かけませんね。

白湯スープ
出典:クックパッド

清湯スープをひき肉で透明にする裏技

清湯スープはガラを沸騰させない低温度で煮込むため、旨味を出すためには膨大な時間がかかるのが弱点です。しかも、ガラを沸騰させて煮込んだ方が味わいにもコクが出ます。少し、肉片が混ざっていたり、白濁していているぐらいの方が旨味は強いものなのです。
その代わり、見た目が透明ではなくなるので、見た目も重視するラーメンを作る場合は、濁ったスープだと困りますね・・・。

そこで、一旦、弱火と中火ぐらいの温度で煮込んだ少し濁ったスープを作って、そのスープを後から透明にする方法がオススメです。この裏技調理ならばコクのある清湯スープが楽に作れます。

この裏技のための秘密兵器になるのが実は挽肉なんですね。
挽肉を使って透明な清湯スープを作るレシピを紹介します。

1.豚ひき肉、または、鶏ひき肉を水に入れて混ぜます。

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出典:みんなのごはん

2.次に少し濁ったスープが入っている鍋に、挽肉入りの水を注ぎます。

3.火にかけてスープが沸いたら少し濁ったスープが透明なスープに!

クックパッド
出典:クックパッド

なぜ、こんなにスピーディーに透き通ったスープになるのでしょうか?
その秘密は、肉ならではの蛋白質の凝固作用を利用しているからです。
肉に火が通っていく際は、蛋白質が凝固していくのですが、その際、濁りの原因になっている小さな肉片や気泡まで一緒に吸着して固まっていく性質があるのです。

この蛋白質の凝固作用のおかげで、濁ったスープが短時間で澄んだスープになるわけです。
ちなみに、念のためですが、豚を主体としたスープの場合は、豚挽き肉、鶏を主体としたスープの場合は、鶏挽き肉を使うのが基本です。もちろん、あえて、鶏スープに豚拭き肉を使って透明にして、ダブルスープっぽい仕上げにすることも可能ですが、スープは単体素材で作っておき、後からブレンドする方が応用が効くと思います。

清湯スープのラーメン@東京

最後に食べログのランキングで東京で食べられる清湯スープの美味しいラーメンを紹介しておきます。ランキングの中でも上位3店は全国でも上位の店なので詳しく紹介しますね。

中華そば しば田

2019年6月現在、食べログのラーメンのランキングで全国1位の超名店。


出典:ラーメンデータベース

メインは中華そば。スープは鴨ガラ主体に蛤からもダシを取って深みを追加。タレは生醤油・再仕込み醤油・たまり醤油をブレンドしたこだわりの強いもの。麺は全粒粉を配合した歯切れのよい細目の低加水麺。
もう1つの人気メニューは煮干しそば。スープは大量の煮干しから取ったものに昆布、鶏ガラを追加したもの。
タレは薄口醤油と白醤油を合わせたタイプ。煮干しの旨味を邪魔しないあっさりと仕上げたタレ。
麺は全粒粉を配合して、ややパツパツした細目の低加水麺を使用しています。

Homemade Ramen 麦苗

2019年6月現在、食べログのラーメンのランキングで全国4位の名店。


出典:ラーメンデータベース

選ばれた小麦粉からこだわって作られる自家製麺、超がつくほど繊細でバランスのいいスープ、どれを食べても間違いなく美味しい具材。すべての完成度が高い至高のラーメン店です。
土・日・祝はウェイティングのシステムを採用。午前の部は10:45に店頭に集まって、再集合時刻を聞いてその時間に行くシステムです。午後の部も再集合時刻を聞くための受付があります。残り杯数によって時間がまちまちですが、13:30~14:30ぐらいになることが多いようです。麦苗の公式Twitterで確認するのがよいです。

麺尊 RAGE

2019年6月現在、食べログのラーメンのランキングで全国5位の名店。


出典:ラーメンデータベース

ここはメインの軍鶏そばが評判の店。
軍鶏ガラ、東京しゃも丸鶏、金華ハムを使用したスープに生醤油を数種ブレンドした醤油ダレで食べさせる、軍鶏と醤油にこだわったラーメンです。麺は三河屋製麺に発注、国産小麦をブレンドしたもの。メニューには煮干しそば、まぜそば等もあって豊富なので、全メニューを食べきるため通いたくなりますね。

麺帯とは?

麺帯とは麺を1本1本に切り分けていく前に小麦粉を練りあげて帯状にしたもの。

ラーメンの麺は、麺帯という平べったい小麦粉が帯状になったものを切って作ります。この切り方は、簡単に言えば、シュレッダーが紙を切り分けていくのに似た原理で作られています。

●シュレッダーは薄く平べったい紙を細長く切り分けていく仕組みです。

出典:まっつんの私的人生日記

●製麺機は平べったい帯状の麺帯を細長い麺線に切り分けていく機械です。

出典:大人の社会見学!成美製麺

こういった一連の製麺工程の中で、小麦粉を練った塊(麺塊と言います)を平べったい紙のように、帯状加工した状態を麺帯と呼んでいます。

麺を作る工程

麺塊を平べったい長い帯状の麺帯に加工してから、1本1本の麺線に切り分けていくことでラーメンの麺ができます。
麺帯がどの工程に位置づけられるのか、整理するため簡単にまとめておきます。

【1】小麦粉・水・かん水等の麺の材料をよくこねる(ミキシング)
ミキシングは、小麦粉・水・かん水を均一に混ぜる、混ぜたものを捏ねる2つの役割があります。この2つを合わせてミキシングといいます。
小麦粉・水・かん水・食塩等の麺の材料を巨大ミキサーに入れて混ぜてこねます。専用ミキサーの内部では芯棒が力強く回転しながら、麺の材料が混ぜられる構造になっています。ミキシングで麺塊に網目構造が形成され、デンプン粒子が抱き込まれて、適度に弾粘性をもった麺生地になる仕組みです。
十分にこね終わったら、そぼろ状になった大きな麺塊ができあがります。

ミキサー
出典:ムロフシ製麺所

【2】麺帯加工
ミキサーで練られた麺塊を麺帯複合機と呼ばれるローラーが並んだ機械に送り込んで、2枚の帯状の麺帯に加工していきます。さらに機械で上下から圧力をかけて1枚の麺帯に複合します。複合によってキメ細かな麺ができます。
この工程でできるのが麺帯です。

f3
出典:麺帯加工(喜多方らーめん本舗)

【3】熟成
麺帯ができたら、一旦、ビニール袋などに入れて麺帯を熟成させます。
一定時間、しっかりと麺帯を熟成させることで、麺の生地全体に弾力が出てきます。この熟成の工程によって、噛んだ感じが心地よい美味しい麺になります。

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出典:熟成(喜多方らーめん本舗)

【4】麺を伸ばす(圧延をかける)
麺の熟成工程が終わると麺帯を最適なサイズ(麺の高さ)にするため引き伸ばします。直径が異なる4~5種類のローラーで段階ごとに最適な圧力をかけて徐々に引き伸ばしていきます。この工程を圧延と呼びます。
いくつものローラーを通していき、少しずつ麺帯が薄く延ばされていきます。

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出典:圧延(喜多方らーめん本舗)

【5】麺を切る(切り出し)
最適な高さに延ばされた麺帯を製麺機で切って麺線にしていきます。機械で丁寧に切ります。以前はちぢれ麺は切り出した後、手で揉んで作っていましたが、最近ではちぢれ麺も機械で加工して作れるようになっています。

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出典:切り出し(喜多方らーめん本舗)

切刃番手

切り刃番手の切手とは麺を切る刃のこと。番手とは30mm幅の麺帯を何本の麺線に切り分けるのかを示す番号。

切刃番手は切り刃の規格を示すもの

切り刃番手はJIS(日本工業規格)で決められている規格です。幅30mmの麺帯から麺を切って何本の麺線にするかを決めているものになります。
切り刃番手の数字は1~30まであって、数字が小さいほど太麺に、数字が大きいほど細麺になります。

ちなみに、切刃番手の切り刃とは、文字どおり製麺所で麺を切るために製麺機にセットされる刃のことです。
以下の写真のように、麺帯から麺線に切り分けていくための刃が並んでいます。

シュレッダーも大きな紙を切り分けていくための刃が並んでいますが、構造としては類似性がありますね。

3切刃【番手5】製麺専用
3 切刃 【番手5】 製麺専用
出典:オークファン

細麺にするためには、番手の大きい数字の刃を使います。
例えば、30ミリ(3cm)幅の麺帯を30等分して1ミリ幅にする場合は、30番の切刃を使います。
1ミリ幅と言えばかなりの極細麺ですね。皆さんが夏によく食べる素麺は30番の切刃を使ったものです。博多ラーメンでは28番ぐらいの極細麺が結構、よく使われますね。

太麺にするためには、番手の小さい数字の刃を使います。
例えば、30ミリ(3cm)幅の麺帯を2等分して15ミリ幅にする場合は、2番の刃を使います。
ただし、2番の刃で切った1.5cm幅は太すぎますね。実際には2番の刃で切った麺は存在しないようです。あまりにも麺として食べにくい極太サイズですからね。

このように、30ミリ(3cm)÷番手で麺の幅が分かるようになっていますが、ラーメンでは太すぎる1~9番、細すぎる29~30番は、まず使われないと思います。実際のラーメンで使われるサイズの切り刃番手だけを表でまとめると以下のようになります。

 

切り刃 麺の幅 麺の太さ
10番 3.0mm 極太
例)東北のラーメン
12番 2.5mm
14番 2.2mm
16番 1.875mm
例)北海道のラーメン
18番 1.7mm
20番 1.5mm 通常
22番 1.4mm

例)関西のラーメン
24番 1.25mm
26番 1.15mm
28番 1.1mm 極細
例)博多のラーメン

麺の高さは?

麺の幅はわかったが、麺の高さはどうなる・・・と思われた方もいらっしゃるでしょうね。
麺は立体なので、幅×高さ×長さでサイズが決まります。

麺の高さ(麺帯厚と呼びます)は切刃の幅の3/4が標準となります。
計算式としては、麺幅×0.75になります。

人間の口は横長なので、麺は完全な丸型や四角型では食べにくいんでしょうね。
基本はやや横長の平べったい麺に加工するということですね。

実際、きしめんは極端に平べったい麺ですが、普通のラーメンも僅かながらに平べったく、高さは幅の3/4サイズになっているというわけです。

切刃にもいろいろ種類がある

切刃は麺の幅や高さを決めるだけではなく、形状も切り刃によって決まります。
麺の切り方次第で、麺の縮れ方、麺を茹でる際の煮こまれ方、麺の口触り・食感、スープとの絡み具合などが変わってくるものなのです。もちろん、麺の茹でる前の見た目も麺の切り方で大きく変わります。

角切(四角切り)
断面を完全に長方形に切る刃。麺の四隅が直角に近い角度になります。ラーメン向けによく使われています。


出典:うれっこ

薄切
刃先を少し鋭角に面取りするための切刃。やや口ざわりが滑らかな食感になります。


出典:うれっこ

丸刃
断面を丸型に成形するもの。うどんや素麺などで使われます。


出典:うれっこ

加水率

麺の加水率は麺を作る際に小麦粉に加えられる水の割合のこと。

加水率とは?

麺の加水率は小麦粉に対する水分の率を表すものです。
麺を作る際は、水分の他、かん水や若干のアルコールを加えることもありますが、加水率の基準となるのは水だけです。
加えられる水は、普通の水もあれば、塩分を少しだけ加えた水もあります。通常は普通の水を使います。
なお、加水率は麺の伸びやすさに関わっている値でもあります。低加水ほど麺が伸びやすく、高加水ほど麺が伸びにくくなります。

低加水麺と多加水麺

加水率が低い麺を低加水麺と言い、加水率が高い麺のことを多加水麺と言います。
低加水麺と多加水麺では、かなり麺の特徴が違ってきますので、それぞれの特徴を詳しく説明していきますね。

低加水麺

文字通り加水率の低い麺のことです。
低加水麺の具体的な加水率は30%以下とされています。

低加水麺の特徴は以下のとおりです。
●小麦粉の配合率が高いので小麦粉の味がストレートに麺に反映される。
●水分が少ない麺のため、水分を吸収しやすい。つまり伸びやすい。
●完成した麺は固めに仕上がることが多い。
●麺が固いため噛み切りやすくした細麺が多い。
●表面がザラザラした仕上がりになり、薄いスープでも麺が絡みやすい。
そのため、薄味スープでも美味しく食べられる。
●水分が少ない分、劣化しにくいので保存期間が長め。

低加水のストレート麺が美味しい圓のラーメン
煮干し鰮ラーメン圓
出典:ラーメンデータベース

低加水麺で代表的なものは、博多ラーメンの細麺ですね。
伸びやすく大盛りが難しいため、替え玉に向いている麺です。
最近では博多ラーメンほどで低加水ではありませんが、パツパツのストレート低加水麺がラーメンのランキング上位店で採用が増えています。

多加水麺

文字通り加水率の多い麺のことです。
多加水麺の具体的な加水率は40%以上とされています。

多加水麺の特徴は以下のとおりです。
●小麦粉の配合率が低いので雑味が少ないクセのない麺になる。
●水分が多い麺のため、水分を吸収しにくい。つまり伸びにくい。
●完成した麺は柔らかめに仕上がることが多い。
●麺が柔らかいので適度に歯ごたえがある太麺が多い。
●表面がツルツルした仕上がりになり、濃いスープでも麺が適度に絡む。
そのため、濃味スープでも美味しく食べられる。
●水分が多い分、劣化しやすいので保存期間が短め。

55%という超高加水で有名なののくらのラーメン

出典:尾瀬のラーメン手帳

多加水麺で代表的なものは、つけ麺の太麺とか、大盛りの麺ですね。
伸びにくいので、長時間、器に置いておけるのでつけ麺にピッタリ。
食べるのに時間がかかって伸びやすくなりがちな大盛りにも最適な麺です。

低加水麺、多加水麺の地域別の状況

ラーメンの麺は地域ごとに違うタイプの麺が流通しています。

九州が最も加水率が低い麺を作っています。上の図には記載がありませんが、中国・四国地方、関西地方も、どちらかと言えば低加水麺が主流です。

東海地方は中間のイメージです。加水率は関西よりは高いと思います。
静岡だと関東に近くなります。

関東から東北は多加水麺になります。特に東北は、とら食堂に代表されるように多加水麺が多いと思います。

ちなみに、麺の形状は、九州・中国・四国・関西の低加水麺はストレート麺がほとんどです。関東・東北の多加水麺の地域には手もみ麺がありますが、前述のように最近では有名店を中心に低加水のストレート麺が増えつつあります。

グルエース 二郎

グルエースとは二郎で使われている化学調味料のこと

Lグルタミン酸ナトリウムが主成分になっている化学調味料は、製品名も種類も複雑で、実に多くの製品が販売されている状況になっています。その中で、ラーメン二郎で使用されている化学調味料はグルエースという製品であることが確実視されています。
グルエースはキリン協和フーズから発売されている業務用うま味調味料です。通販で手頃な価格で手に入るので一般人が入手するのも簡単ですが、1kgとかとんでもない量で販売されているので、買おうとするには躊躇してしまいますね。

グルエース
出典:グルエース1KG調味料|フードバリュープロ

グルエースの麻薬性

二郎を食べ続けると病み付きになる(中毒になる)と言われる理由の1つが今回、紹介する化学調味料のグルエースだと言われています。

グルエースは、スープの旨味強化と乳化に作用する旨味調味料なのですが、ある医師は一種の麻薬類似の作用があると指摘しています。
実は、グルエースの主成分は、純度の高いLグルタミン酸ナトリウムで、このグルタミン酸という成分は脳内で分泌されるホルモンの一つなんですね。
グルエースは脳内のシナプスで情報伝達を介在する神経伝達物質(Lグルタミン酸ナトリウム)を多く含んでいるので、大量に摂取すると脳にダイレクトに快感を伝えてしまいます。

つまり、グルエースを摂取する(食べる)と「脳内で美味しいと快く感じる→また欲しくなる」といったサイクルで、病みつき症状になってしまいがちなのです。

二郎を3回以上、食べると二郎依存症になる・・・と言われるのもあながち科学的な根拠がないわけではありません。

二郎の旨さの謎

二郎は好き嫌いが0か100かに大きく分別されてしまうタイプの極端なラーメンなので、ダメな人はいくら頑張ってもダメなラーメンに思えるのでしょうが、旨いと思える人の場合、限りなく旨いと思えるものです。

その二郎の旨さがすごいと思えるポイントの1つに、明らかに大量の化学調味料(Lグルタミン酸ナトリウム)が入っているのに、ガツガツ食べられるということがあります。
一般的なラーメン店の清湯スープにあれほど大量の化学調味料を入れたら、化学調味料の後味がずっと口に残り続けるほどしつこくなってしまいます。正直にわかりやすく言えば美味しく食べられないほど後味が悪いラーメンになります。
・・・ですが、二郎の場合、カエシも強く、麺も太く、アブラも多いラーメンなので、むしろ強者同士の連合でバランスが取れて、しっかり美味しく食べられるということなんでしょうね。

塩分も風味も強いカネシ醤油を使ったカエシに、化学調味料をたっぷり加えた上で、ワイルドに豚肉や豚骨を煮込んだアブラっぽい多いスープで割ると、化学調味料のくどさを感じさせなくする力強さに満ち満ちた強力なスープになってしまうというわけです。

この強者連合のスープの中では、グルエースのLグルタミン酸ナトリウムの純度の高さもプラスに働いているようです。二郎を家庭で自作した人のブログによると、グルエース有と無の両方を作って食べ比べると、やはりグルエース有の方がインパクトが強くなるということです。

湯きり(ゆきり)

湯切りとは麺を茹でた後、ザル・テボ等で水分をしっかり落とすこと。

湯きりは、ラーメンはもちろん、スパゲティ、うどん等を調理する時、麺に付着している水分を除去するための作業工程です。Web上の辞書では「食材を湯から引き上げて水分を取る作業」という定義で書かれています。

実際のところ、ラーメンに限らず、麺料理では湯切りをしないとスープ・つけダレ・ソースは薄まってしまい、本来の美味しさで提供できなくなります。湯切りは麺料理の最後の工程として非常に重要な役割があるのです。

かつて、支那そばやの故・佐野実さんが【完璧な湯切】と【甘い湯切】の麺の重量を測った実験を公開しました。その結果は【甘い湯切り】は【完璧な湯切り】に比べて麺が重く(つまり余計な水分が麺のまわりに付着していて)、スープを薄めてしまうので味が落ちるという結論でした。
この検証により、湯切りは実際にスープの味に影響を与えることがわかり、丁寧に行うのが重要だということが科学的に証明されたわけです。

ラーメンの湯切りをするための道具

湯切りをする道具には、テボ(深ザル、振りザル)、平ザルがあります。

まず、テボです。これは、ラーメンの麺を茹でるために使用する調理道具として最も普及しているものです。麺茹で鍋にテボを立てて、麺を1人前づつ入れて茹でます。茹でた後、ちょうど1人前ずつ湯きりができるので、3~6杯ぐらいまでのラーメンを一度に茹でて湯切りするには非常に便利な道具です。

テボによる湯切り
テボでの湯切り
出典:Yahoo!知恵袋

欠点としては、麺が湯の中で動く範囲がテボの中に限られているので、麺を泳がすようには茹でられないことがあります。しかし、最近では麺を泳がせて茹でられる巨大テボを使うことで、テボの弱点を解消する店も出てきています。ミシュランで星を取った蔦がこの巨大テボを採用しています。

次に、平ザルです。そば揚という呼称もあります。これはラーメンの麺を茹でるために使用する調理道具としてはテボよりも歴史があります。

平ざるによる湯切り
平ざるでの湯切り
出典:はてなFotolife己【おれ】写真館

茹で釜全体を使って麺を泳がせながら茹でられるので、麺全体に均等に熱が通せて、麺の旨味を最大限に引き出せます。チャッチャと湯きりする職人の動きも見ていてカッコイイものですよね。
欠点としては、ラーメンの杯数分の麺を素早く分けて引き上げる高度な職人技術が必要になるということです。誰でもできる技ではないのです。
また、どんな達人でも最初に引き上げた麺と、最後に引き上げた麺では、確実に茹で時間が変わってしまいます。これは味に差が出てしまう平ざる特有の欠点なんですね。

テボによる湯きりはパフォーマンス?

高座渋谷の中村屋の湯切りパフォーマンス「天空落とし」が話題になった頃から、ラーメン店主による湯切りパフォーマンスが話題になっています。ただし、昔ながらの職人はパフォーマンスを批判することがありますね。

平ザルの上で麺を躍らせて湯切りするのがプロなんだ。くぼんだザル(テボ)なら誰がやっても麺が飛び出すことないからね。もっともらしく素人に毛が生えた程度の若造が湯切りのパフォーマンスなんてやっていると笑っちゃうよ。あんな湯切りなら誰でもできるからな。

こんな言い方をする職人もいます。確かに天空落としにはパフォーマンスの部分もあるかもしれませんが、あれは勢いをつけることで湯切りの回数を減らして麺を傷めないという合理的な意味もあるやり方なのです。

一方、平ザル方式は前述のとおり、麺の茹で時間がバラバラになる本質的な欠点もあるので、合理的なテボを批判するのは間違っている部分もあります。まあ、この職人が一度に一杯しか作らないならば説得力もありますけどね。実際にはそこまではこだわっている店はほとんどありません。

やはり、テボ・平ざるとも一長一短があるわけですが、前述したテボと平ざるの利点を組み合わせた巨大テボには今のところ欠点が見当たりません。これからの湯切りは巨大テボが主役になっていく可能性があると思います。

白湯(パイタン)

白湯(ぱいたん)とは鶏ガラ・豚骨などを強火で煮込み、脂肪とゼラチン質が乳化した白濁スープのこと

白湯(パイタン)は文字通り白く濁ったスープ

白湯では、白は白濁、湯はスープを意味しています。まさに漢字そのままで白く濁ったスープというわけです。ちなみに、白湯の本場の中国では「白湯スープ」とは言いません。湯がスープで、タンもスープなので、スープという意味の言葉が2重に使われてしまうからです。
ちなみに、白湯という漢字は、ラーメン業界では「ぱいたん」と読まれ、医療現場では「さゆ」と読まれますが、今回はラーメンとは関係ない「さゆ」の方は割愛しますね。

白湯(パイタン)スープ出典:Nobby のサーフ&グルメ

白湯ラーメンと豚骨ラーメンの違い

一般的には、白湯ラーメンという際は、鶏ガラスープで作った鶏白湯ラーメンのことを示すすことが多いと思います。一方、豚骨スープで作った白湯ラーメンも白湯ラーメンと呼んでもいいのですが、実際には、豚骨ラーメンと呼ばれることが多いですね。

白湯ラーメン、白湯というキーワードが一般的になる前から、博多豚骨ラーメンなどで豚骨ラーメンという言葉がラーメン界では定着していたからだと思います。

白湯(パイタン)の作り方

さて、実際に白湯を自分で作って食べてみたいとお思いの方にコラーゲンたっぷりの白湯スープのレシピを公開します。

白湯スープは鶏ガラor豚骨を長時間煮込んで作りますが、豚骨は一般のスーパーでは手に入りにくい上、鶏ガラの5~10倍も煮込む時間がかかるので家庭では鶏ガラを素材として使うのが一般的です。鶏ガラを煮込んで作る白湯スープも完成までにはそれなりの時間はかかりますが、豚骨と比べれば、圧力鍋も使わずに済む、下処理(下ゆで)も簡単・・・など、豚骨スープを作るよりも遥かに手間が少ないのが魅力です。

■スープの材料(2杯分、1杯450ml)
鶏ガラ 約400g
ネギ(青い部分) 100g
野菜(玉ねぎ、キャベツ等) 100g
ニンニク 2片
生姜 100g
酒 100cc
昆布 5cm×5cm
水 6リットル

■作り方(手順)
1.大きい鍋に鶏ガラが隠れるぐらいまでを目安に水を入れて沸騰させます。

2.沸騰したら鶏ガラを入れます。血抜きするために3~5分くらい下茹でします。

出典:家系ラーメンを作った話

3.生姜は半分、玉ねぎは1/4ぐらいに切っておきます。

4.下茹でしたお湯を捨てて鍋を空にしてから、下茹でした鶏ガラと
切っておいた野菜、ニンニク、生姜、酒、水4リットルを鍋に入れて、
そのまま蓋を閉めて強火で2時間ぐらい煮込みます。

5.2時間ぐらい煮込めばスープが白濁してきます。ずっと強火で煮ているため
水が少なくなっているので、2リットルの水を鍋に追加します。


出典:完全図解!どこよりも詳しい!濃厚鶏白湯スープの作り方

6.引き続き強火で2時間ぐらい、さらに煮込みます。

7.煮込み終わる30分前ぐらいに弱火にして昆布を入れます。

8.煮込み終わったら、目の細かい網などで濾せば白湯スープが完成します。


出典:完全図解!どこよりも詳しい!濃厚鶏白湯スープの作り方

かえし(返し)

かえし(返し)とは煮かえしの略語でスープで割る前のタレのこと。

ラーメンの本・ブログ等を読んでいると、かえしという言葉が出てくることがあります。日常生活では滅多に使わないキーワードなので「何これ?」と思われる方も多いかもしれませんが、ラーメンでかえしという場合、ほぼ醤油ダレを意味します。

タレ専用のホーローの容器に入れられたかえしかえし
出典:CooNelNel

本来は「かえし」は蕎麦用語

かえしとは「煮かえし」という言葉の後側だけ使ったもので、もともとは蕎麦業界で使われている専門用語です。簡単に言えば蕎麦つゆのタレのことです。このかえしを出汁で割ったスープが蕎麦汁になります。ラーメンもタレをスープで割って作るので、スープで割る前のベースとなるタレのことをカエシと呼ぶわけです。

    • かえし+出汁=蕎麦つゆ
    • かえし+スープ=ラーメンのスープ

今では、蕎麦とラーメンのかえしは別々のものになっていることが多くなっていますが、ラーメンが登場した時代は、蕎麦もラーメンも同じかえしを使っていたケースが多かったと考えられます。同じものだからこそ、蕎麦のタレ、ラーメンのタレ、どちらも「かえし」と呼んでいたと考えられています。

実際、蕎麦・ラーメンとも長い歴史がある山形では、蕎麦で使っているかえしに、ラーメンの鶏ガラスープを注いで仕上げた「鶏中華」というラーメンが今でも残っています。
また、歴史ある商店街にはラーメンが食べられる蕎麦屋が残っていることがありますが、今でも蕎麦屋で食べられるラーメンでは、蕎麦のかえしにラーメンのスープを注いで作っていることが多いようです。
かえしは、蕎麦屋のあらゆるメニューに使われる万能タレなので、ラーメンに使うことは当然の発想だったのでしょうね。

また、ラーメンの神様と言われた山岸一雄さんも、蕎麦で有名な長野県の出身なのですが、山岸さんが発明したつけ麺も「冷たい麺をかえしを薄めて酢を入れたタレにつけて食べる麺料理」ということで、まさにざる蕎麦と同じ発想で作られたラーメンですね。このように、かえしは元々は蕎麦のレシピからラーメンに受け継がれたものなのです。

ラーメンならではかえしの作り方

基本的なかえしは、醤油+砂糖+みりんを混ぜたものに火を入れて作ります。
家庭で作るなら醤油400ミリリットル、本みりん40-80ミリリットル、砂糖50-80gが適量だと思います。以下の手順で作れます。
1)鍋に醤油を入れて、中火で温める。煮立たせてるのは絶対にNG。
2)アクのような膜が鍋の上に広がってきたら砂糖を入れる。
3)砂糖が溶けたら鍋にみりんを入れてかき混ぜる。
4)弱火にして表面がアクのような膜で覆われてきたら火を止める

ただし、蕎麦とラーメンでは「素材に豚を使うかどうか」が大きな違いになっています。かえしに限らず、蕎麦を使う料理で豚を使うケースは滅多にありませんが、コクを求めるラーメンの場合、豚の使用は非常に重要です。
そのため、昔はチャーシュー(煮豚)の煮汁を煮詰めたものをタレ(かえし)として使う店が非常に多かったのです。一昔前のラーメンのレシピ本を読むとタレ(かえし)はチャーシューの煮汁で作ると書いてあるケースがほとんどです。

チャーシューは、醤油+砂糖+みりんを混ぜたかえしで煮るので、できあがったラーメン用のかえしには豚エキスと脂が入っていて、コクが強くなっています。

もちろん、現在はラーメンの美味しさを追求するため、かえしを専用工程で作る店が増え、製法も店ごとに違うものになってきています。また、ラーメンの場合、カエシに頼らず、香味油で風味を増すことも増えています。それでも、今もなお、ラーメンの味のコントラーはかえしです。返しの重要性は根強く残っています。

今のラーメンのかえしは醤油ベース以外もある

ラーメンは蕎麦と違って伝統にとらわれずに作られるため、タレのバリエーションも醤油以外にも拡大しています。
味噌ラーメン、塩ラーメンも、ラーメンの重要なメニューになっています。そのため、今では、味噌ラーメンのタレ、塩ラーメンのタレなども含めた、タレ全体の総称としてもかえしという言葉が使われることもあります。