ダブルスープ(Wスープ)は豚骨・鶏ガラなど肉系素材スープとカツオ節など魚介系素材スープをラーメン丼に注ぐタイミングで合わせる製法のこと
Wスープを広めた青葉@中野

出典:中華そば青葉の公式HP
ダブルスープ(Wスープ)の作り方
ラーメンのキーワードでダブルスープという用語を耳にしたことがある方は多いと思います。でも、「ラーメンのダブルスープはどうやって作るもの?」って質問された場合、ちゃんと回答できますか?
一般的には「動物系ダシと魚介系ダシの両方で取ったスープのことでしょ?」って答える方が多いように思います。つまり、全ての豚骨魚介、鶏ガラ魚介のラーメンは、全てダブルスープということになる?
実は違うんです。
ダブルスープ(Wスープ)のW(ダブル)とは、単純に「素材の系統が2つある」ということではなく、「素材の系統が異なる2つのスープを最後にブレンドする製法」ということなのです。
具体的には、動物系(例:豚骨・鶏ガラ)のスープと、魚介系スープ(例:煮干し・鰹節)を別々の寸胴で取って、最後に1つのスープとして混ぜ合わせる製法を示す用語なのです。ですから、単純に2つ以上の素材を一緒に煮込んで取ったスープは、ダブルスープ(Wスープ)とは呼びません。
例えば、豚骨・鶏ガラのスープを煮込んでいる鍋の中に、出汁袋などに入れた鰹節・煮干しを追加して仕上げるスープはダブルスープとは呼べません。あくまでもダブルスープ(Wスープ)は、2つの寸胴・鍋で取った別々のスープをお客さんに提供する直前のタイミングで1つに合わせるラーメンの作り方(製法)のみが正式な意味になります。
Wスープ発祥
Wスープというキーワードを世に広めたのは、やはりダブルスープの元祖と言われる中野の青葉です。今では老舗ですが、開店当時はWスープを世間に知らしめた新進の名店として、一世を風靡しました。
なぜ、1つの店に由来するダブルスープ(Wスープ)製法が日本中に拡大したのか?
やはり、ダブルスープ製法で作ったラーメンは美味しいから・・・というのがシンプルな回答になります。
それまでのラーメンでは、スープは1つの寸胴で、豚骨・鶏ガラ・魚介ダシを煮込んでいるのが通例でした。
しかし、このやり方の場合、同じ温度・同じ煮込み時間だと、魚介ダシがいち早く劣化してしまいます。魚介ダシは煮込み過ぎると、苦くなって風味が落ちます。
ですから、1つの寸胴でスープを作る場合でも、魚介ダシは最後に寸胴に入れて短時間でダシを取る製法にしている店が多いのですが、それでも営業時間中に魚介ダシは徐々に劣化していってしまいます。
そこで、素材によって最適に煮込む時間、煮出す温度を分けるため、【豚骨・鶏ガラなどの肉系の寸胴】、【煮干し・鰹節などの魚介系の寸胴】を別々に分けて仕込む合理的なダブルスープ(Wスープ)製法が考案されたわけです。2つの寸胴でスープを取って最後に丼の中で1つに合わせるダブルスープ(Wスープ)ならば魚介系ダシの劣化がほとんどない美味しいスープになります。煮干し・鰹節などの魚介系の寸胴だけは低温にしておき、魚介ダシの劣化を防げるからです。
21世紀のラーメンでは、さらに進化してきていて、豚骨・鶏ガラなどの肉系の高温寸胴のスープと煮干し・鰹節などの魚介系の低温寸胴のスープをブレンドして、さらに雪平鍋で加熱して、熱々の状態で出す店が多くなりましたね。
ダブルスープ(Wスープ)は作る手間はかかりますが、やはり美味しさは別格になるので、品質の良さが認められて全国に広まっていったわけです。
ダブルスープのレシピ
自宅でダブルスープを作るレシピを紹介します。

出典:Wスープの自作ラーメン
材料 (4人分)
鶏ガラ・モミジ・手羽先 2羽分
昆布 1枚
魚系だしパック 2袋
葱 1本
ニンニク 2片
豚肩ロース 500g
【1】魚介系ダシを水出しで仕込む
出典:Wスープの自作ラーメン
最初に、煮込まずにダシが取れる魚介系素材を仕込んでいきます。作業当日の前日夜から昆布を半分に切ったサイズのもの2枚、魚介系の市販のダシパック3つ、煮干5~7本ぐらいを鍋に入れ、常温水でダシを取っていきます。寝ている間に8~10時間ぐらい水につけておけば自然にダシが取れます。いわゆる水出しってヤツです。煮込まないので全く酸味が出ないスッキリしたダシが取れます。
【2】入手した鶏ガラを仕込む
出典:Foodie(フーディー)
動物系素材は入手しやすい鶏系で作ります。鶏ガラ、手羽先はスーパーでも普通に買えます。ただし、モミジはスーパーでは滅多に手に入りません。豚系の素材も全般的にスーパーでは入手できません。
ちなみに業務用素材の品揃え豊富なハナマサや精肉店ならモミジも豚系素材も手に入ります。
【3】動物系ガラ(鶏ガラ)を煮込む
出典:鶏がらスープのとり方 _ レシピサイトぷちぐる
鶏の旨味を前面に引き出すため、野菜は香味野菜(葱・ニンニク・生姜など)だけにするのがベターだと思います。しっかりアクを取りながら強火で煮込みます。1時間ぐらい鶏系ガラを煮たらチャーシューにもなる豚肩ロースを投入。ただし、豚肩ロースは煮込み過ぎてパサパサにならないよう約1時間後にスープから引き上げます。
【4】やや白濁した鶏ガラスープができる
出典:Wスープの自作ラーメン
スープはを4-5時間ぐらい煮込むと白濁してきます。鶏ならではの香りが最も強く出るタイミングだと思います。これ以上、煮込むと鶏白湯になってしまうので一般的なWスープでは、これぐらい煮込んでから網で濾すのがベストです。この状態でスープをアミで濾せば、しっかりした鶏ガラスープが完成します。
【5】魚介スープを煮込む
出典:全部自分で作りたい
水出しで仕込んでおいたスープを沸騰させないように低温で10分ほど温めます。魚介スープの温度は非常に重要。沸騰させるとすぐに苦味が出て劣化してしまいます。途中で昆布を取り出してから鰹節を追加投入して引き上げます(追い鰹と言います)。追い鰹まで終えたら様々な風味がミックスされた魚介スープになります。
【6】魚介スープの完成
出典:俺のラーメン:「魚介系スープ」の作り方
魚介系のダシは細かいので、最後に細かい網で濾します。舌触りがスッキリした感じになるように仕上げるのがポイントです。これで魚介系スープが完成します。
【7】ダブルスープの完成
出典:Wスープの自作ラーメン
最後に、鶏ガラスープと魚介系をミックスして、Wスープが完成します。
最後の最後に、風味は最上になっている状態でブレンドするので、劣化のない美味しいWスープになるのです。
もちろん、Wスープだけではラーメンにはなりません。
スープの味付けを決めるタレ、チャーシュー、味付け卵、メンマ、海苔などの具を用意して、麺を茹でれば、ダブルスープを使ったラーメンが完成します。
トリプルスープ
ラーメンの進化は果てしなく、ダブルスープだけでなく、トリプルスープまでありますね。普通は、鶏スープ+魚介出汁+貝出汁でトリプルにすることが多いように思います。この3つのスープをそれぞれ別の鍋・寸胴で作ります。
鶏系を1つの寸胴でスープをとって、魚介と貝出汁を別に取ればダブルスープです。ダブルとかトリプルとか、工程に由来する表現はやめて「豚骨魚介」とか「鶏豚魚介」とか分かりやすい表現をした方がいいかもしれません。1つの鍋でスープを取っても、別の鍋で取って後で合わせても、それぞれの素材を劣化させずに作りきればいいと思いますね。