湯切りとは麺を茹でた後、ザル・テボ等で水分をしっかり落とすこと。
湯きりは、ラーメンはもちろん、スパゲティ、うどん等を調理する時、麺に付着している水分を除去するための作業工程です。Web上の辞書では「食材を湯から引き上げて水分を取る作業」という定義で書かれています。
実際のところ、ラーメンに限らず、麺料理では湯切りをしないとスープ・つけダレ・ソースは薄まってしまい、本来の美味しさで提供できなくなります。湯切りは麺料理の最後の工程として非常に重要な役割があるのです。
かつて、支那そばやの故・佐野実さんが【完璧な湯切】と【甘い湯切】の麺の重量を測った実験を公開しました。その結果は【甘い湯切り】は【完璧な湯切り】に比べて麺が重く(つまり余計な水分が麺のまわりに付着していて)、スープを薄めてしまうので味が落ちるという結論でした。
この検証により、湯切りは実際にスープの味に影響を与えることがわかり、丁寧に行うのが重要だということが科学的に証明されたわけです。
ラーメンの湯切りをするための道具
湯切りをする道具には、テボ(深ザル、振りザル)、平ザルがあります。
まず、テボです。これは、ラーメンの麺を茹でるために使用する調理道具として最も普及しているものです。麺茹で鍋にテボを立てて、麺を1人前づつ入れて茹でます。茹でた後、ちょうど1人前ずつ湯きりができるので、3~6杯ぐらいまでのラーメンを一度に茹でて湯切りするには非常に便利な道具です。
テボによる湯切り
出典:Yahoo!知恵袋
欠点としては、麺が湯の中で動く範囲がテボの中に限られているので、麺を泳がすようには茹でられないことがあります。しかし、最近では麺を泳がせて茹でられる巨大テボを使うことで、テボの弱点を解消する店も出てきています。ミシュランで星を取った蔦がこの巨大テボを採用しています。
次に、平ザルです。そば揚という呼称もあります。これはラーメンの麺を茹でるために使用する調理道具としてはテボよりも歴史があります。
平ざるによる湯切り
出典:はてなFotolife己【おれ】写真館
茹で釜全体を使って麺を泳がせながら茹でられるので、麺全体に均等に熱が通せて、麺の旨味を最大限に引き出せます。チャッチャと湯きりする職人の動きも見ていてカッコイイものですよね。
欠点としては、ラーメンの杯数分の麺を素早く分けて引き上げる高度な職人技術が必要になるということです。誰でもできる技ではないのです。
また、どんな達人でも最初に引き上げた麺と、最後に引き上げた麺では、確実に茹で時間が変わってしまいます。これは味に差が出てしまう平ざる特有の欠点なんですね。
テボによる湯きりはパフォーマンス?
高座渋谷の中村屋の湯切りパフォーマンス「天空落とし」が話題になった頃から、ラーメン店主による湯切りパフォーマンスが話題になっています。ただし、昔ながらの職人はパフォーマンスを批判することがありますね。
平ザルの上で麺を躍らせて湯切りするのがプロなんだ。くぼんだザル(テボ)なら誰がやっても麺が飛び出すことないからね。もっともらしく素人に毛が生えた程度の若造が湯切りのパフォーマンスなんてやっていると笑っちゃうよ。あんな湯切りなら誰でもできるからな。
こんな言い方をする職人もいます。確かに天空落としにはパフォーマンスの部分もあるかもしれませんが、あれは勢いをつけることで湯切りの回数を減らして麺を傷めないという合理的な意味もあるやり方なのです。
一方、平ザル方式は前述のとおり、麺の茹で時間がバラバラになる本質的な欠点もあるので、合理的なテボを批判するのは間違っている部分もあります。まあ、この職人が一度に一杯しか作らないならば説得力もありますけどね。実際にはそこまではこだわっている店はほとんどありません。
やはり、テボ・平ざるとも一長一短があるわけですが、前述したテボと平ざるの利点を組み合わせた巨大テボには今のところ欠点が見当たりません。これからの湯切りは巨大テボが主役になっていく可能性があると思います。