パツパツ麺とは強力粉で作った歯切れのよい低加水ストレート細麺のこと
出典:なかざわ製麺
2010年代の初頭からパツパツ麺を使うラーメン店が増えてきています。特に、煮干しラーメン店と淡麗ラーメン店で、パツパツ麺の採用率が高くなっていますね。
パツパツ麺は麺そのものの食感がよく、小麦粉の風味もいい麺なので、人気が出ているのだと思います。
また、麺の味もさることながらラーメンの麺線がキレイに整いやすく、店としてはビジュアルがいいラーメンを出せて、客としてはインスタ映えする写真をSNSにあげられる・・・。スマホ時代には、見た目の良さまで重視される状況がパツパツ麺の拡大要因の1つになっているように思われます。
麺線がきれいなことで有名な柴崎亭では、アルバイト1人1人にパツパツ麺で麺線を整える研修を徹底的にやっているようなので、いつ行って麺線が整った盛り付けで提供されますね。
麺線がきれいなことで定評がある柴崎亭
出典:ラーメンデータベース
なぜ、パツパツ麺はパツパツとした固めの食感なのか?
パツパツ麺は、強力粉を低加水で捏ねて作った細麺のストレート麺です。
まずは、強力粉を使っていること。
これがパツパツとした食感を生む大きな要因になっています。通常、ラーメンの麺は、強力粉か準強力粉で作ります。
強力粉はタンパク質とグルテンの含有率が高く、粉粒子が大きい特性があります。タンパク質量・グルテン量の含有率が高ければ高いほど、固く歯応えがある麺になります。
特に、グルテンは捏ねることで強固な網の目状の塊になってお互いにくっ付き合うので、切れにくく歯応えがある麺にするための重要な役割を担います。もともと強力粉はパスタやフランスパンに使われる小麦粉ですので、固い歯応えには定評がある粉なのです。
ちなみに、準強力粉は強力粉よりグルテンの力はやや弱めなので菓子パンやラーメンの多加水麺に使われます。パツパツ麺で使われることはありません。
パスタやフランスパンは強力粉で作られている!
出典:BUSINESS INSIDER JAPAN
次に、低加水(麺の加水率が低いこと)も麺のパツパツ感に貢献しています。
加水率が低い分、小麦粉の含有率(グルテンの含有率)が高まり、より固いパツパツとした麺に仕上がる要因になっているわけですね。
これもパンと同じで、水分の多いイギリスパンはふわっとした食感、水分の少ないフランスパンが固い食感になるのと共通要素があるように思います。
また、細麺ということも、パツパツ麺として重要な役割を担っています。
粘り気がある固い麺は、フランスパンのように歯応え十分の麺に仕上がるのですが、これが太麺だとどうなるか? 実はラーメン二郎の麺はオーションという銘柄の強力粉を使っているのですが、何しろ太麺なので噛み切るのが大変です。
二郎を食べる際、格闘技のようになるのは、麺量の多さもさることながら、噛み切るのが大変な強力粉の太麺であることも大きな要因です。二郎での太麺対決ではアゴまで疲れますよね。
でも、噛み切りにくい固い麺でも細麺ならパツっと噛み切れて格闘技にはなりません。
さらに、このパツっと噛み切れる食感がパツパツ麺の語源だとも考えられています。
最後に、ストレート麺です。これはパツパツとした食感には、直接の関係はないかもしれません。強力粉の低加水麺を噛み切れるように細麺で仕上げる場合、手もみでウェーブをかけにくいということなんだと思います。食感には関係がありませんが、前述したように見栄えの上では重要な役割を担っていますね。
パツパツ麺の有名店
パツパツ麺のラーメンを出す有名店を何店か紹介しておきますね。
煮干中華ソバ イチカワ
出典:食べログ
あらゆるラーメン情報誌やラーメンサイト等で何度もランキング上位に掲載され、全国でもトップクラスに入る店です。麺は煮干しスープと相性の良い低加水での歯切れがいいパツパツ麺を採用しています。煮干しラーメン店で、パツパツ麺の採用が多いのは明らかにイチカワの影響を受けているからですね。
自家製麺 伊藤 銀座店
ミシュランのビブグルマン掲載の中華そば。基本のトッピングは刻みネギだけというシンプルさがポイントですね。チャーシューはオプションです。その分、スープと麺には上質な素材を使用しています。コシの強い自家製麺はパツパツで噛み応えがあるタイプ。癖になる食感です。
中華そば よしかわ
埼玉の上尾にある寿製麺よしかわ。スッキリした優しい味わいのスープと白醤油のタレを合わせた幅広い年齢層に評価される煮干しそば白醤油は、歯切れよいパツパツ自家製麺と風味豊かな煮干しスープの組み合わせ。優しく何度も食べたくなる味わい。限定メニューも抜群に美味しい。
パツパツ麺のルーツは西日本
パツパツ麺のルーツは西日本です。特に博多ラーメンのストレート細麺はパツパツ麺に近い麺であると言えましょう。博多ラーメンは一般的なパツパツ麺より、さらに切手番手の数字が高い切り刃を使っている極細麺なのでパツパツ麺とは麺の太さが最大の違いだと思います。切手番手の数字(=麺の太さ)以外は、パツパツ麺も博多ラーメンの麺も、かなり似ていますね。
実は博多ラーメンだけではなく、近畿のラーメン、中国四国のラーメンも、基本は低加水麺です。四国には歯応えの良さで有名な讃岐うどんもありますし、この一帯には強力粉を食べる文化が古代から根付いているのかもしれません。